Laugh Love Life Magazine

No.142 (2017.12.8)
MATSの高純度 高密度 高濃度ご縁物語

CHEF`Sのアンテナバリサン男ことMATSのちょっとマニアックな熱血ストーリー

第47回
「自然の力を使って描く」

今回はかなり自己満でマニアックなネタを。

ここ数年僕の中で変わってきたことがあります。

絵を描き始めた頃は、写真にどれだけ近づけるか競い合ったり、工事現場で壁に絵を描いたり、頑なな職人肌でした。
そんなんだから、絵を描き始めて数年は全部自分で隅から隅まで描いてやろうと思っていました。

もちろん手描きの絵はそれが何よりの魅力で、
人の手を使って全て仕上げることに意味があると今でも思っています。
でもその頃はそういう意味ではなく、どんなものも自分が機械にでもなりきって全部同じように筆先で表現しようとそんなことに命を懸けていました。

しかし石の上にも三年とはよく言ったもので、
絵を仕事にしていく中でも一つのことに気づくのに数年かかることが多々ある。
例えば今の似顔絵という仕事の中では、僕は一貫して水彩絵の具を使っている。
もともとエアブラシでリアル画を描いたり、アクリル絵の具で塗り重ねていくことに慣れていたので、この水彩絵の具という画材がすごく僕にとって簡単そうで難しかった。
一見すると小学生でも使う画材だし、使いやすくてリーズナブルに思えるのだけど、やってみると奥深い。
その難しさと面白さはズバリここにあると思っている。
それは「水加減」。
筆先にどれだけ水を含んでどれだけ絵の具を付けて、どんな加減で画面に置くか。
これが全てといっても過言ではない。

数年前までの僕は水を絵の具を溶かしたり伸ばすだけのものとして利用していた。
その描き方も間違いではないけど、やはり水彩の魅力である透明感はこれでは出せない。

そんなことに気づいたのは筆をあれこれ変えてから。
一本の筆を見つけ使いやすいと思ったらしばらくそれを極めるまで使ってみる。
周りからいろんな情報を得たり、自分の表現に飽きが来ると、違う筆を使いはじめる。
何年も同じ種類の筆を使い続けてようやくその筆の能力や魅力に気づく。
何なら使わなくなってから気づくこともよくある。
筆は大切なパートナーだから、どんなに連勤が続いても必ず筆だけは肌身離さず持って帰る。
そんな大切な筆を数年経って乗り換えると、面白いものでまた自分の絵自体が変わる。
これも出会い。
まるで恋人のようだなとほんとに思う。

今メインで使っている筆は「削用筆」というもので、一本数千円する。
これはジブリの背景画を描く人たちも使う筆だ。
その特徴は中と外で違う毛を使っているため、水の含みが良い上にシャープな線が引ける。

使い始めた当初、端から端まで自分の小手先で表現することに躍起になっていた僕は使いづらくてしょうがなかった。
しかし慣れてくるにつれこの筆の活かし方がわかってきた。
要は、もっと自然の力を信じるんだって事。

そういえば、エイジングという特殊塗装の仕事をしていた頃、それと同じような経験をした。
絵の具をちょこちょこっと付けて水で流す。後は勝手に自然が仕上げてくれる。
1から10まで描き割りでやってきた僕にとってそれは本当に斬新だった。
というよりも自分以外が信じれなかった。
水彩絵の具もそう。
結局は水の力や表面張力をもっと利用して描けば、良い雰囲気の絵が描けるんだって何年もやってみて気づいた。

今となってはこれが楽しくて仕方ない。
マッツンさんの絵が優しくなったとか丸くなったとか言われるのは
おそらくこれもひとつの原因だと思う。
イメージはサーフィン。いかにやってくる波にうまく乗って美しい表現が出来るか。
そんな感じ。
これはパソコンやスマホじゃ真似できまい。

何年もやってようやく気づくなんて鈍感に思えるかもしれないけど、
ノウハウってのはそんなもん。
これはほんの一例に過ぎない。
何年も真剣に向き合ってはじめて気づくことがあるし、
自分にしかわからない絶妙な塩梅てのを見つける。
これは少し人に教えたからってすぐに真似できるものではないと思ってる。
そうやってみんな自分なりの絵が少しずつ出来上がっていくんだと思う。

MATS



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