Laugh Love Life Magazine

No.136 (2017.9.8)
MATSの高純度 高密度 高濃度ご縁物語

CHEF`Sのアンテナバリサン男ことMATSのちょっとマニアックな熱血ストーリー

第44回
「てづくり」

壁画会社に在籍していた頃の話。

15年ほど前、ある飲み会の席でこんなやり取りがあった。

先輩Yさんと、後輩だけど僕よりは年上のHくん。
生粋の職人気質のYさんはとことん細かいものや、これ人が作ったの??って物に魅力を感じるタイプ。どちらかと言うと要領は悪くて無駄が多いようにも見られがち笑
逆に後輩のHくんは、発想は豊かだけど合理的で、なんでも一番早い方法を見つけ出すことに生きがいを感じるタイプ。ただコイツは要領が良い。

この二人は一緒に仕事をしていたことはなく、入れ替えで入って来た二人だった。
間に挟まれた僕はというと、良くも悪くも誰とでも上手くやっていけてたので、まったく違うやり方だったけどそれぞれの良い部分を引き出しながらそれぞれと楽しく仕事をしていた。

ある忘年会のとき、新旧のメンバーが集まりこの二人が同席した。
僕にとってはなんだかやりづらい。
中学の友達と高校の友達がばったり一緒になってしまったような気持ち悪さ笑

我が強い二人だったから、当然噛み合わなかった。
途中酒もまわり、一番恐れていたことが起こった。
ある施設に描かれた壁画の話題になり、ちょっと生意気だったHくんがYさんにたて突いた!
その壁画は写真と思ってしまうくらい緻密に描かれたもので、Yさんはこれをえらく絶賛したのだ。
そこでHくんはそんなものは無駄だと言い出した。
「このご時勢いくらでも綺麗に出力できる技術はあるんだから、人が時間と労力とお金をかけてやる意味がない」と強く主張した。
これがまたHくんは腹が立つくらい弁が立つもんだから、その場にいた人が全員納得してしまうだけの説得力で話の主導権を握った。
Yさんは「お前はわかってない」とか言って応戦するものの、だんだん返す言葉もなくなってきて最後はあきらめた感じになってしまった。
僕はどちらの肩を持つこともできず、二人の言い合いをただただ聞いてるしか出来なかった。
そこで当時の社長が最後には「Hが正しい!」とか言い出したもんだから、Yさんは気分を悪くしたままその会のお開きを迎えてしまった。

次の日H君が「昨日は楽しかった~!特にあの瞬間は気持ちよかった」と言っていた顔が忘れられない。
正直僕はまったく楽しい飲み会とは思えなかったから。
彼はただただ先輩を黙らせた事によっぽど達成感があったんだろうな~。
僕にはその感覚はわからなかったからちょっと後輩ながらH君が怖く感じた瞬間だった。

話が逸れてしまったけど、あの時僕はまだ24歳くらいで自分の主張があまりなく、本当にどっちが正しいとか思えなかった。
でもあれから15年が経ち、時代もどんどん変わってるけど、壁画や似顔絵をやってきて改めてアナログの素晴らしさを実感している。

先日日本橋高島屋の記念日百貨店で、30人もの作家さん達と一緒にお仕事をすることが出来た。
改めて手作りの素晴らしさを実感したし、少しづつしか話せなかったけど、みんな個性があって作家さん自体が作品なんだな~って思えて、なんだか学生時代のようなワクワク感を思い出した。

15年前の飲み会の席で、僕はどちらの味方も出来なかったけど、今なら迷わず黙ってしまったYさんに賛同するだろうなってふと思った。
たとえ気づいてもらえなくたって、不器用だって一生懸命人がひとつひとつ手を入れていることに意味がある。
某夢の国で仕事をしていたとき、海外のディレクターさんが、そこに拘れるのは日本人くらいだって言っていた。

40歳を目前にして、職人として改めて初心に帰った。
もともと要領のよくない僕が近道なんか探してどうする笑
無駄と思える一手の先にこそ宝の山が眠ってるかもしれない!

MATS



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