CHEF`Sのアンテナバリサン男ことMATSのちょっとマニアックな熱血ストーリー
第23回
小さな独楽のおじいさん
先日こんなところに行ってきました。
私用で箱根にいったときの話。
案内され向かった場所は・・・
ろくろ細工というものの工房。
ここで作っているものの一つに「十二卵」というものがあり、なんとこれはロシアの民芸品マトリョーシカのルーツとも言えるものでした。
(しっかり、海を渡ったという諸説がその歴史の書に刻まれておりました。)
すると、奥から出てきたのは優しそうなきれいな白髪のおじいさん。
このおじいさんこそが、田中一幸さんというこの道60年以上の大ベテランの方。
すぐに奥に案内され、ある実演を始めました。
なんと・・・「日本一小さい独楽」を作る過程を見せてくれるというのでした!!
横向きに備え付けられたろくろに木材を装着し、絶妙な力加減で削り始める。
そしてほっそ~い筆を手に取り、0.1ミリほどの線をその回る先端に着色。
また隣に別の色を着色。
このミクロな世界にしっかりデザインがされている!
強すぎても弱すぎてもいけないし、1ミリでもズレたら・・・もう大惨事。
独楽である事はわかったけど、そのどこからどこまでが独楽なのか??
と思った途端その先端だけを切断!
作りはじめてものの五分。直径5ミリほどの独楽が完成したのでした!!
予想以上に小さかった!!
さっそく鮮やかに回してくれました!
いやぁ、なんともなんとも!!お見事でした!
この技術、今ではもう継承する人がいないらしく、彼が最後の職人らしい。
何よりすごいのは、この方80歳を超えてらっしゃるということ。
僕も何年か前ならその技術にだけ感動して帰るところだったと思うけど、不思議なもので、似顔絵というものをはじめてから何を見るにしても“人”に興味が出てしまう。
どんなすばらしい絵でも、音楽でも、美味しい料理でも、いったいどんな人が?? という目で見てしまう。
今回の体験はその両面を同時に見ることができた。
その過程も、技術も、工房そのものも、そしてその人自身も、見るもの全部が刺激的で「スゲー!スゲー!」ばっか言ってた笑
その体験を終えて一番に感じたことは。
やっぱりどんなものも、
「その人自身が作品」
だということ。
特に60年以上もの間、誰もやらないようなことを貫き通しているその人物こそが日本一小さい独楽や、マトリョーシカの原点になるほどの貴重なものにも負けない、まさに「日本の宝」だったのではないかと僕は感じました。
やっぱり日本の技術はこういう人が作ってきてくれたんだなって思えました。
僕も芸の道を歩む者として、そのスピリットのほんの一部でも引き継げたらと思います。
自分が作品・・・本当の意味でそう言えるときが来るまでは、まだまだまだまだ道のりは長い!
松原一史
公式Facebook
*SNSなどでご予約、スケジュール等のお問い合わせは受け付けておりません。
株式会社マスター・ジーベック
CLUB CHEF`S事務局
TEL:03-3881-3108
club@master-xebec.com